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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

後金五両フイになる

「そうだ、廻ると二十里はある」

「あるともあるとも、ある筈だ」

「そこにおられるのだ、道人様はな。……オイオイ待て待て、どうしたんだ。周章てて身仕度をしてどこへ行くんだ?」

「儲けに行くだよ、五両がとこ」

「ははあ、誰かに頼まれたな」

「伊集院さんていう人にね。道人様のお住居さえ、知らせてくれたら五両やると……」

「五日遅い、気の毒だなあ」哄然たる彦兵衛の笑い声!

後金五両フイになる

哄然と彦兵衛に笑われたが、お榧婆さんには解らないらしい。

「何んのことだね、五日遅いとは?」こう怪訝そうに訊く声がした。

「湖水の中のお住居によ、道人様のおられたのは、今日から数えて五日前だってことさ」

笑いながら云うらしい彦兵衛の声。

「へ――」という声が聞こえて来た。びっくりしたお榧の声である。「それじゃア今はどこにいるだかね」

「今日の朝まだき下山されたよ」

「へ――、下山? どっちの方へ?」

「福島から中仙道、名古屋の方へ行かれた筈だ」

「へ――さようで、福島へね。……まあまあそれだけでも結構だ、伊集院さんへ知らせて上げよう」

立ち聞きをしていた伊集院、クルリ踵を巡らすと、麓の方へ歩き出した。