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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

彦兵衛曰く五日遅い

……山影様は妾のもの、他へやることではございません」

三人三様の意見がある。なかなか互いに引っ込もうとはしない。

と浜路が云い出した。

「しかし肝心の山影様が、道人様の後を追い、里へ下ってしまわれた今は、何を申しても仕方のない事、妾はひとまず家へ帰り、旅装を調え改めて、山影様の後を追い、福島から中仙道、名古屋であろうと江戸であろうと、山影様と逢うまでは、おさがしするつもりでございます」

「それでは妾も」とお仙が云った。「かけかまいのない蝮捕り、誰に別れの言葉もいらぬ、すぐに追っかけ参りましょう」

「妾も」云ったのはお吉である。「螢ヶ丘へまず立ち寄り、旅仕度をしてさてそれから。……」

一人は萩原、一人は螢ヶ丘、お仙ばかりはどこへも寄らず、チリヂリバラバラに別れたが、はたして誰が真っ先に、宗三郎を目付け出すことだろう?

それはとにかく、この日の夕方、彦兵衛老人の門口を、そっと覗いている男があった。

「お榧婆さんに逢いたいものだ」

他ならぬ伊集院五郎である。

と、内から恒例の、夫婦喧嘩の声がした。

彦兵衛曰く五日遅い

お榧と彦兵衛、恒例の喧嘩――

「四日も五日も家を開けて、いったいどこをウロツイていただあ! このロクでなしの爺さんはよ?」