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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
で、本なんか読まないがよろしい。本を読むような暇があったら、自分の踏んでいる足もとを、じっと睨み付けているがいい。すると自分が解ってくる。しかしあんまり解りすぎてもいけない。あんまり自分が解り過ぎると、生きていることが厭になるだろう。つまり何んだ、生きるということは、解らない自分を解ろうとして、もがいているということだからなあ。が、お談義は止めとして、彦兵衛さんや」と呼びかけた。
「はい」というと彦兵衛老人、慇懃に草へ手をついた。
「いよいよお前さんともお別れだよ。もっともそのうち帰っては来る。厭になったら三日で帰る。だが目下の考えでは、一年ぐらいは遊んで来る。今から思うと失敗だったよ。御岳山中に薬草あり万病に利くなんて云わなかったら、こうまでお山がガタピシと、物騒がしくならなかったんだろうに。少し宣伝が大袈裟だったよ。そこで俺は逃げ出すのさ。自分の叫び声に吃驚りして、自分で逃げ出すというわけさ。そこでお前さんに頼みがある。俺の留守中俺の住居へ行き、薬草の手入れをしておくれ、もっとも兎丸がいるのだから、園の廃れる気遣いはないが、あの子一人では手が廻るまい」