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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

彦兵衛空樽へ腰を下ろした。「と云うのは他でもない、お嬢さんの尋ねる道人様、今日お山を出ましたのでね、それでお知らせに上がりました」

「え?」と浜路びっくりした。「どちらへおいでになりましたので?」

「福島へ出て中仙道、名古屋の方へ行かれるそうで。麓までお見送りをして参りました。へいさようで、たった今ね」

浜路驚いて胸を反らせた。

「山影様がおいでだったら、どんなに喜ばれることでしょう。こんな時においでにならないとは! 知らせてあげたい、知らせてあげたい!」

「ほほうそれでは山影さんは、どちらかへお出かけなされたので?」

「行衛が知れないのでございますの」浜路彦兵衛へ取り縋った。「あの晩以来、ええあの晩! 妾はじめて道人様へ、お目にかかったあの晩以来、お行衛が知れないのでございますの」

「ははあなるほど、それは残念、ではよくよく道人様とは、ご縁がないというわけですなあ」

彦兵衛いかにも気の毒そうに、浜路の顔を見たものである。「で、もちろんさがされたでしょうな?」

「ええええそれこそ御岳一円、手を尽くしてさがしましたが、おいでにならないのでございます」

「不吉不吉、ひょっとかすると、兇暴な山窩の奴ばらに……」