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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

常陸水戸家の鷺組の頭

と、望遠鏡を覗くのである。

「今日もいる。また笑った!」

さてある夜のことである。三弥も連れず紋右衛門も連れず、一人で立ち出でた尾張宗春、水主町まで歩いて来た。名月ではあるが深夜のこと、それに辻斬りの噂が立ち、ここらあたりは人も通らぬ。

と、行手から一人の女、俯向きながら歩いて来た。擦れ違おうとした時である.フッと女は顔を上げた。それを認めた尾張宗春、

「おっ、そなたは、濠端の女!」

「よいお月夜でございます」

女は艶然と一笑した。それはまさしくあの女であった。

袖を捉えた尾張宗春、

「念願叶った! とうとう目付けた!」

「殿様!」と云うとその女、柔かに宗春の手を取った。「おいでなさりませ、妾の住居……」

「行かないでどうする! 連れて行ってくれ!」

行きかかった時、影のようなもの、ボッと人家の軒へ立った。

常陸水戸家の鷺組の頭

軒に立った一個の人影! これがまた異様な風態である。女であることは疑いなく、しかも非常に美しい。年は若く小造りで、全身白無垢を纒っている。月光が凍って出来たような女。晩夏だというのに雪が降り、雪女郎が出たといってもよい。じっと見ている眼の鋭さ! しかし笑ったら愛嬌があろう。