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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
白無垢の女呟いたが、ヒタヒタと後を追っかけた。
黒塗りの駕籠に黒振り袖のお紋、それが闇の森を行くのである。普通の人には見えない筈を、白無垢の女には見えるとみえ、数間を離れて追って行く。
と、にわかに白無垢の女、「しまった」と云って突っ立った。「どこへ行ったんだろう、消えてしまったよ」
なるほど、姿も見えなければ、また足音も聞こえない。
「驚いたねえ」と云いながら、白無垢の女は小走った。「たしかこの辺で消えたんだが」
見廻したがただ暗い。巨木が無数にすくすくと、夜空を摩しているばかりだ。
と、その時、どこからともなく、嘲笑う女の声がした。
「水戸で名高い女忍び衆、鷺組の頭のお絹さん、今夜はご苦労でございました。よく見送ってくださいましたね。だが大変お気の毒、玉は引き上げてしまいました。ジタバタしたって追っ付かない。諦めて古巣へお帰りよ。それともお前さんに出来るなら、妾達の塒をさがしてごらん。まず駄目だろう、目付かるまい。ホッ、ホッ、ホッ、ホッ、口惜しそうだねえ」「ううむ」とこれには白無垢の女――すなわち水戸の女忍び衆、鷺組の頭のお絹という女も、胆を潰さざるを得なかった。