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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「あっ、いかにも道人様、女の泣き声が聞こえます」

すると続いてお吉が云った。「そうして男の呻き声が!」

「さよう」と道人ひきしまった。「何か事件が起こっているな。よくない事件! 不吉な事件! これはうっちゃっては置かれない」

「でも天井が巌では」

「駄目だなあ」と薬草道人、「天井が普通の巌なら、人声なんか聞こえないよ。人工で作った岩天井さ。……松火をお上げ、松火をお上げ」

松火で天井を照らして見た。一個の鉄環が下がっている。

「そうれごらん、この通りだ。あの鉄環をグイと引く、すると天井が一方へ傾ぐ、その隙間から這い上がる、上の間道へ行けるのだ。間道作りの一様式、いずれ何んとか名があるんだろう。が、そんなことはどうでもいい。どれ」というと手を延ばし、グイと鉄環をひっ掴んだ。「俺一人では力が足りぬ。さあさあ皆俺へ取り付け! 待ったり待ったり少し待ったり! 様子を見よう、機会を待とう」

耳傾けたものである。

ちょうどこの頃のことである、名古屋の城の西丸の床下、そこに出来ている間道基口、そこへ飛び込んだ武士がある。その人数二十人、先に立ったは山形三弥、それと並んだは山路紋右衛門、その他近習の面々である。