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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
こいつがひどく受けたと見え、ドッと一同笑い出した時、フラリとはいって来た客があった。浜路の父の萩原仁右衛門、トンと腰掛けへ腰をかけると、四辺の様子を見廻した。
「いらっしゃい」と云ったが組紐のお仙、まだ仁右衛門を知らなかった。御岳にはしばらくいたけれど、萩原へ行ったことがないからである。「お誂えは?」と訊いたものだ。
「さようさな、お銚子を」「はいはい」と誂えを持って来た。
チビリチビリと嘗めながら、仁右衛門聞き耳を立てている。道人さがしに出かけたが、これぞと思われる噂も聞かず、通りかかったのが七ツ寺、評判の高い蝮酒屋、客の出入りも多かろう、噂を聞かないものでもないと、そこではいって来たのである。
と、はたして一人の若者、こんなことを云い出した。
「殿様の紛失も不思議だが、御器所の森の大木の下で、膏薬を売っている爺さんなんかも、世放れがしていて不思議だったよ。木曽の御岳から来たんだそうだが、悪口ばかりを云っていたっけ」
「あああいつか」ともう一人の若者、すぐに応じたものである。「俺も一昨日あの森へ行き、あの爺さんにぶつかったが、全く皮肉な爺さんだった。云うことが世間と逆なんだからなあ」