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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「ではソロソロ取りかかろうか」
「よかろう」というと伊集院五郎、「オイ喜三太、オイ嘉市、駕籠の扉を引きあけねえ」
トヤ駕籠使いの喜三太と嘉市、「合点!」というと扉をあけた。同時にお紋と伊集院、大声で叫んだものである。
「山影氏! 山影氏!」
「お絹さん! お絹さん!」
眼を覚ました二人の者、ギョッと驚いて飛び上がったが、もう遅い、スルスルスル、トヤ駕籠の中へ引っ込まれた。
と、扉が閉じて錠が下りた。
「やれ!」という伊集院の声! つれてポンと駕籠が上がった。タッタッタッと遠慮は入らない、今度は高く足音を立て、密林をくぐって走り去ったが、この時二人の人物が、傍らの藪蔭から現われて、見送っていたのには気が付かなかったらしい。
「先生、何者でございましょう?」一人の人物が囁いた。三十格好の人物である。
「さあ、私には解らない」こう云ったのは六十五六歳、葉洩れの月光に映じた姿、脚絆、甲掛、旅装い、軽羅の十徳を纒っている。医家か、宗匠か、いやいや異う、その打ち上がった風采から押せば、名ある儒者に相違ない。何んと神秘的の眼付きだろう! 浮世の一切の煩わしさを遁がれ、燦然と輝く天の星、そればっかりを眺めていたら、そんな眼付きにもなるだろう! そう思われるような眼付きである。