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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

真っ暗である。牢の構造さえ見ることが出来ない。

「彼らにとらえられた浜路殿、我らと同じくこの屋敷内に、とじ込められているかもしれぬ。これも助けてやりたいものでござる」ややあって宗三郎こう云った。

「そうして妾はどんなことをしても、宗春様をお探しし、ご無事にご帰城致させねば、使命をとげることが出来ませぬ。それにいたしても床下の水路、小舟の中にいた乞食のような老人、どうやら尾張宗春様を、お救いしたようではありますが、善意か悪意かその辺のところ、心もとなく思われます」

「何んとなく人間放れのした、神々しかった容貌から推せば、悪人などとは思われませぬ。うむそうだ、その老人の側に、一人の女がおりましたが、お絹殿にはお見掛けかな?」

「はいチラリとではありましたが、見かけましてございます」

「あれも拙者の懇意の女、御岳うまれのお吉と申して、私娼ではあるがしたたか者。それに致してもあの女まで、この名古屋に来ているとは? そうしてあんな老人と一緒に、あんな水路にいようとは? 何が何だか見当が付かぬ」

「山影様」とその時である、鷺組のお絹囁くように云った。「ここを運よく今夜にも、遁がれ出ることが出来ましたら、七ツ寺にある蝮酒屋、そこをお訪ねなさいまし、あなたを命かぎり焦がれているお仙様がおいででございます」