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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「それを不愍と覚し召し、お館様にはこっそりと、貴殿ご夫婦を逃がされたそうで」

「爾来故郷のこの地へ引っ込み、今日までくらしてございます」

「するとお館は貴殿にとっては、普通の故主ではござらぬ筈」

「命の恩人にございます」

「どうしてご恩を返されるな?」

「その儀については日夜肝胆……」

「ははあ、砕いておられるか?」

「いかにもさようにございます」

「その大恩あるお館様、目下窮境に立っておられる」

仁右衛門じっと眼を据えた。

「この際でござる、ご恩返しをなされ」

「私に出来ますことならば……」

「薬草道人を目付け出し、説いて江戸入りさせるのでござる」

「が、いったい何んのために、そうお館におかれては、道人様の江戸入りを、ご懇望なさるのでございましょう」

「よろしい、お話し致しましょう。お聞きなされ」

と膝を進めた。

この時ドッと酒場の方から、拍手笑声が湧き起こった。

そこで作者はペンを改め、再び酒場の光景を書こう。

「ようよう女神のご来降だ」一人の杣夫が喚き出した。

「いよう浜路大明神!」こう云ったのは薬草採り。

「莫迦を云うな、大明神なものか、歌舞の菩薩のご影向だ」こう云ったのは若い武士。