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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

蝮酒屋の常連と見える。「闇から棒と云いたいが、月夜にお仙ちゃんだから尚驚く、前触れをしてっから飛び付いてくんな、突然やられると胆を潰さあ。……え、何んだって山影さん? ああその人なら表て通りの、三丁目の辺でグルグルと、変梃な女に取り巻かれているよ。うんそうだ真っ黒の女に。それも一人や二人じゃアねえ、数十人の女にだ! ただの女じゃアなさそうだ、烏のお化け、蝙蝠のお化け! と云ったような女だなあ。そいつがグルグルと廻ってるんだ、そうしてヒラヒラと手を上げるんだ、すると山影とかいうお侍さんが、クルクルクルクル廻るってものさ! 何かを投げられているらしい。どっちみちあんなにブン廻っては、早晩根を疲労らせて、死んでしまうに相違ねえ。……オヤどうしたんだいお仙ちゃん、顔色を変えてさ、嚇しちゃアいけねえ」

お仙突然叫んだものである。「妾の大切な宗さんだヨーッ」それから地廻りをコヅキ廻した。

「行っておくれよ、さあ一緒に! 助太刀助太刀! さあ一緒に!」それからまたも叫び出した。「山影さんなら宗さんだヨッ、宗さんなら尋ね人だヨ――ッ」

「あッ、なるほど」と地廻りだけに、お仙が誰を探しているかは、とうに聞いて知っていたらしい。