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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

大勢俄然一変し、総崩れ立った烏組、右往左往に逃げ廻る。

吃驚りしたのは烏組のお紋、捕りかけた宗三郎をうっちゃって、突っ立ち上がった真正面から、姿は見えないが声がした。

「オイお紋さん、もう駄目だよ!」お絹の声だ! 響き渡った。「これまでは随分虐めたねえ、今度こそこっちで虐めてやる。さあさあ逃げられるなら逃げてごらん。だがお前さんの周囲には、妾達鷺組の連中が、ビッシリ立っているのだよ。が解るまいね、解ってたまるか! 嘘と思ったら動いてごらん、さあさあ自由に、動いた動いた!」嘲笑し切った声である。

じっと立ち縮んだ烏組のお紋、偉いことになったと思ったが、物はためしと左手へ走った。とポカリと叩かれた。姿も見えなければ手も見えない。白濛々たる一色である。が、濛々たる白色の中に、鷺組の者がいたのであろう、頬をポカリと叩かれたのである。

今度は右手へ走ってみた。とまたポカリ、頤を撲られた。「ううん」と呻いたが後へさがった。とまたポカリ、腰を蹴られた。今度は前へ! するとポカリ! 膝頭を蹴られたものである。

「どんなものだいお紋さん!」お絹の声が愉快そうに響く。