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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
それにどうやら太郎丸方には、大砲などの用意もあり、あまり短兵に攻め立てると、ブッ放さないものでもない。その上もしもヤケになり、寄せ集めて置いた兵を出し、市中へ放火でもされたひには、それこそ大変なことになる。そこで今のところでは、そうやって遠巻きに巻き立てて、様子を見るより仕方がない。もし先方から打って出たら、止むを得ないから打って取るが、しかし一番願わしいは、敵方の方で諦めて、名古屋を引き払って貰いたい、そうして国境いを出かかった時、一挙に攻めて鏖殺したい、と云う意見でございましたよ。ところで島津太郎丸方の、様子はどうかと窺がいましたところ、これはまた思い切って静かなもので、無人の空家とも云いたげで、人声もしなければ物音もしない。だから一層物凄く、取っ付き場さえありませんので。……こんな塩梅でございますから、太郎丸方から兵を出し、蝮酒屋を攻めるようなことは、今のところありそうにも思われませんがしかし油断も出来ませんねえ」これが松吉の口上であった。
「なるほど」と云ったまま弥五郎親分、渋い顔をして頷ずいた。「ご三家の威光をもってしても、こいつアいかさま太郎丸を、討ち取ることは出来まいよ。