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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

道に迷った組紐お仙

「考えて見りゃあ妾は馬鹿さ、伊集院なんて薩摩っぽに、けしかけられて来たんだからねえ。五十両の旅費だけふんだくり、隠れてしまやあよかったんだよ。蝮ばかりがトンマじゃあない、お仙よお前もトンマだよ。……だが本当に妾としちゃあ、山影さんに逢えないのなら、江戸にいる気はなかったんだからねえ。木曽の山奥へ行ってしまって、一年も二年も帰らないなんて、あの薩摩っぽに嚇かされてみりゃあ、ついフラフラと本気にもなり、後を追う気にもなるじゃあないか。……それはそうと一体全体、ここは何んという所だろう? 道標があるよ、見てやろう。……西、萩原、北、大洞。さあ困った、どっちへ行こう? 蝮占術、今度こそ本芸」

蝮を一匹掴み出し、キューッと扱いて真っ直ぐにし、道標の前へ置いたものだ。

「さあさあお歩き、いい子だことね。お前の行く方へ妾も行くよ。宗さんのいる方へおいでおいで。その代り見やがれお前の行った方に、もしも宗さんがいなかろうものなら、皮をひっぺがして蝮酒にするよ」

すると蝮は動き出した。さあどっちへ行くだろう?

道に迷った組紐お仙

道標の前へ据えられた蝮、どっちへ行くかと思ったら、北、大洞の方へ蠢き出した。