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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「お館様のか! ……廃るは、武士道!」

「大小捨てるあなたがえ?」セセラ笑った八重梅の眼チラチラチラと猫のようだ。「それなら恋は廃りませんかねえ」

襖にピッタリ背をもたせ、立ち縮んでいる幹之介、額から汗が眼へはいる。「俺には出来ない! 俺には出来ない」

「この恋それでは切れましょうよ。スッパリとねえ、今夜かぎり! ……そうなったら妾も自棄! 男を漁って漁りぬく。卑怯未練なお侍、幹之介様への面あてに、あなたと仲よしのご同僚、片っぱしから引っかける。あなたのお屋敷の門口を、毎日手を引いて通ってやる。もがかしてあげます、よござんすねえ」

どうだこれでもかというように、グーッと首を突き出した。真っ白の頸足へもつれる髪! 美しいなアこれだけで、大概の雄は退治られる。

はたして幹之介ブルブルと顫え、またベッタリとくぐ折れた。「八重梅!」と云ったが、呻き音だ。

「絞め木に掛けるか! 恋の絞め木へ!」

「苦しくばお遁がれなさりませ」

「恋か! 武道か! ……クラクラする!」

「二つを取ろうとなされても、それは阿漕でございますよ」冷っこい冷っこい声である。

「なるほどなあ、それもそうだ! ……まさしくそいつ、眠剤だな?」