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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
じっと据えつけた眼の前に、封じ薬が置いてある。
「何の偽わり……南蛮渡来……だろうと妾は思うのさ! 珍らしい薬は一切合切、南蛮渡来へ持ってきますからねえ。……ああ眠剤には相違ありませんよ」
「そうか」と幹之介考えた。「俺は幸い近習役、手文庫のありかも知っている。……薬草道人やモカの類、城へ入り込んで無礼講、表も奥も乱痴気騒ぎ、ドサクサ紛れに大奥へ入り、ご常用の湯釜へ投げ込んだら……中納言様にはご熟睡、そこを忍んでお手もと金! 盗もうと思えば盗めるなあ。……やろう!」
とばかり度胸を決めた。つと手を延ばすと封じ薬、グッとひっ掴んだものである。
「それでこそ男! お侍さん! ああさ妾の可愛い人さ!」
「八重梅!」と呻くと飛びかかった。
そいつを八重梅抱きしめた時、縁にあたって人の気勢!
露路の細道駒下駄で
縁にあたって人の気勢!「おや!」と思った荻野八重梅、スラリとばかり立ち上がり、障子をあけて覗いて見た。縁が鉤手に曲がっているその曲がり角を男の姿、急いで行くのが見て取れたが、背後姿でわからない。「気になるねえ」と呟いたが、そのままピッシャリ障子を締め、また坐ったは幹之介の前。