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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
杖を持っているから盲目らしい。俄盲目に相違ない。感が悪そうにひろって行く。
ガラリと一軒の戸が開いた。
「へい」というとその門附け、三味線を抱えて弾き出した。
※(歌記号、1-3-28)翼休めよ禿松
これで解った、この門附け、阪東薪十郎の成れの果てだ。だが河東節の門附けとは? かなり面妖なものである。
「ふざけるねえ、朝っぱらから?」すぐにポンと剣呑を食った。
「へい」というと薪十郎、門を離れて歩き出した。と、もう一軒の門へ立った。
※(歌記号、1-3-28)翼休めよ禿松
「うるさい!」「へい」と歩き出した。とたんに誰かにぶつかった。
「気を付けやがれ!」「これは粗忽」左へ向かって辞儀をしたが、その人は右を通ったらしい。二三歩歩くとまたぶつかった。「気を付けなよ」と女の声。「へい」と薪十郎右へお辞儀。だが女は左を通った。
「懐中も冷めてえが、浮世も冷めてえ」首を縮めてヒョロヒョロと歩くと、また懲りずまに門に立ち、河東節の三味線を弾き出した。
「はてな聞き覚えのある河東節」
こう呟やいた者がある。編笠を冠った浪人姿往来に立ち止まって耳を澄ました。尾羽打ち枯らしてはいるけれど、まさしく志水幹之介。