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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「俺は侍を棒に振ったよ」

ホーッと薪十郎溜息をしたが、「わっしア探す! 世界の涯まで! 怨みの青火で照らしてね!」

「俺もどこまでも探す気だよ」

「旦那ア」と薪十郎顫える手で、潰された両眼を指さしたが、「ブッツリ、こいつを、簪でね、つかれた時のその痛さ! わっしア思い知らせてえんで!」

「心の傷はもっと痛い!」

「聞いてくだせえ!」と薪十郎、グイと三味線をかい込んだ。「怨みの音色だ! 響かせやしょう! 河東節の水調子、この玉菊を弾くごとに、思いを強めるんでございますよ! 復讐のね! 復讐のね!」

「俺とは何も彼も反対だなア、俺はそいつを耳にすると、恋の心が燃え立って来るよ」

やがて弾き出された河東節、こればかりは上手だ、玉菊一曲! 阪東薪十郎唄い出した。あざれた社頭、季節は冬、朝の霧が立っている。そいつを縫って絃声と肉声、延び縮みして響いて行く。聞き澄ましている幹之介、眼瞼がブルブル顫えている。涙をこらえているのだろう。唄いつづけている薪十郎の口、これもブルブル顫えている。怨みをこらえているのだろう。

弾き終えると薪十郎立ち上がった。「旦那様へご縁があったら……」