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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

伊集院五郎ひっかかる

「どなた? お釜さん? お菅さん?」それは品のある声であった。

「いいえ妾は旅の者、女蝮捕りでございます。うっかり道に迷いまして」

「おやマアそれはお気の毒、野宿するより少しはまし、よろしくばお泊まりなさいまし」

束ね髪の細面、痩せた身長の高い女である。茣座を小脇に抱えているので、六文であることには疑いはないが、板戸の割れ目から射す燈火に、ぼんやり照らされて立った姿は、びっくりするほど凄艶である。

「ご親切に有難う存じます。でも、妾は、野宿の方が……」

「ホ、ホ、ホ、ホ、お前さんには、ここが怖いと見えますね。いいえ大丈夫でございますよ。女ばかりで男ッ気なし、取って食うとは申しません。それに妾が付いております。ここの束ねをするお吉がね。野宿も結構ではございますが、狼谷から狼が、襲って来たらどうなさいます」

「まあ狼がおりますので?」

「狼どころかもっと怖い、山窩だっているのでございますよ。放火と泥棒と殺人と、三つを兼ねた山窩がね」

「まあ恐ろしゅうございますこと」

と思わずお仙は顫えたものだ。

伊集院五郎ひっかかる

伊集院五郎が歩いている。と向こうから小娘が、途方もない大きな声を立て、何か喚きながら走って来た。