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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

その枕もとに薬がある。お仙か浜路かが親切にも、煎じてくれたものだろう。

その横に浜路が坐っている。何んの変ったところもない。昔通りのよい浜路だ。しばらく静養したためか、血色もよければ肉も附き、それに都にいたためか、御岳にいた時より優雅に見える。

「いくらかよろしゅうございますか?」こう訊いたのはその浜路。

「はい有難う存じます。いくらかよいようではございますが、でもやっぱり横腹の辺が」

八重梅嘘を云っている。横っ腹など痛む筈がない。はなから病気ではないのだから。……しかし病気と云っているので、浜路にはどうやら心配らしい。

「困ったことでございますね。でもご心配なさいますな。間もなく癒るでございましょう。すっかりよろしくなるまでは、ここにおいでなさいませ、ちっとも遠慮はいりません。ここのご主人はご親切、難儀な人だと見て取ると、いくらでもお助けくださいます」

「はいはい有難うございますが、いえそうしてもおられません、そろそろお暇を致さねば……痛、痛、痛! また差し込みが!」

厭な女だ、芝居者だけに、どうにもシグサが本物に見える!

「妾すこし擦すりましょう」浜路正直にも寄って来た。