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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

チョロッカにやっつけた仕事じゃアないよ! 水も洩らさず計った仕事さ! どんなことがあったって遁がしっこはないよ! ……妾達の住居は海の上、幾隻か浮かんでいる大船さ。そこへお供をするだけさ! 用意はよいかね、つかまえるよ!」

こいつを聞いた浜路とお仙、仰天したが追っ付かなかった。しかし二人ながら気丈者だ、取り乱そうとはしなかった。

ピカリ気付いたことがある。

「それじゃア何んだね……」組紐のお仙、怒りの声を筒抜かせた。「にわかに差し込み痛い痛い……などと、憐れっぽく持ちかけて、蝮酒屋へ転がり込んだ、あの女の門附けも、やっぱりお前達の仲間だったんだね?」

「そうさ」とお紋面白そうに、「仲間も仲間、立派な仲間さ」背後を振り返ると声をかけた。「太夫さんへ、太夫さんへ、何もはにかむ事アないよ。出て来て正体をおさらしよ」

「そうだねえ」と云いながら、木蔭から出たのは荻野八重梅、含み綿を取り痣を拭き、膏薬をひっぺがした立派な顔を、常夜燈の灯影へ突き出したが、

「浜路さんにお仙さん、何んとも申し訳ございませんねえ」

まずこう云ったものである。決して揶揄的の調子ではなく、心から恥じたような調子であった。