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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

またも逢った「恋」と「怨み」

「こいつもみんなあいつのためだ! 逢って怨みを晴らしてえなあ」ピョコリとここで首を上げた。「待てよ、こいつ、飛んだことになったぞ! 盲目、盲目、俺は盲目だ! とすると何んにも見る事ア出来ねえ。たとえ八重梅と擦れ違っても、それと感付くことも出来ねえ。ううむ、こいつ、困ったなあ」

またションボリと首を垂れた。

上からは火事の真っ赤の光、横からは常夜燈の蒼白い光、そいつに照らされた薪十郎の姿、胸が窪んで肩が落ち、腰から下に力がなく、痩せ細ってまるで亡霊である。

「ナーニ」というと意気込んだ。「肉眼はなくとも心眼がある! 怨みの青火だって燃えている、探さないで置くか! こいつで照らし!」

そこでコツコツと歩き出した。社殿の方へ歩いて行く。

と、この時町の方から、またも一つの人影が、フラフラと社地へはいって来た。何んと志水幹之介ではないか! 懐中手をして首を垂れ、ここを歩いてはいるけれど、思いは遠い彼方にある――と云ったように歩いて来る。空を見ようともしなかった。四方を見ようともしなかった。足もとばかりを見詰めている。社殿の方へ歩いて行く。彷徨って行くと云った方がいい。