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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「へい、さようでございます。人気さえあればいい商売、そうしてあっしにもいささかながら、人気もあったものでございますよ」
「で、この土地の役者かな?」
「橘町の小屋にいました」
「何、橘町? ふうむ、そうか。……俺の女も橘町にいたよ」
「花魁衆でございましたかな?」
「いいや」と云ったが暗然とした。「お前と同じような役者だった」
「へーい、それじゃア女役者で?」薪十郎ヌッと首を抜いた。
「ああそうだよ」と幹之介、「芸も達者、美人でもあった」
「橘町の女役者?」延ばした首を引っ込めたが、阪東薪十郎考え込んだ。「玉川千玉、斎木小竹、和泉歌女寿、藤田芝女、橘町にも女役者随分沢山集まっているが、さーてね、いったいこのお侍さん、どいつの凄腕に引っかかったものか?」そこで歯を見せて笑ったものである。「お気の毒さまでございますなあ、誰彼と云わず女役者、ろくな人間はおりませんよ」
「俺にはそうは思われないよ。その女は大変親切だった」
「へーい、親切? これはこれは、親切のあげくに手を切られたんで?」嘲笑うような調子である。
「それがな」と幹之介手頼りなさそうに、「事の起こりは行き違いからさ。