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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

そうして妾の役目というのは、宗春様を騙かって、毒殺することでございました。あなたと馴染を重ねたのも、みんなそのためでございました。つまりあなたの手を通し、宗春様に毒薬を進め、弑逆いたそうと致しましたので、あの時お渡ししたあの薬、眠剤でなくてまさしく砒石! 事が破れてあなた様がご浪人なすったと知った時、いやアな気持ちが致しました。今日の明け方この社地で、社殿の縁に腰をかけ、盲人の阪東薪十郎と、妾の噂をなされた時にも、その常夜燈の蔭にかくれ、立ち聞き致しましてございます。やっぱりいやアな気持ちがし、あなたに対してはお気の毒、妾自身に対しては、空恐ろしくなりました。たった今し方、あなた様が、あの薪十郎を手にかけて、お殺しなすったご様子を見、もういけないと観念し、立ち現われましてございます。幹様……」と云うとさらに強く、抱いている手を引きしめた。「でももうよいのでございます。妾の体も今は自由、と云うのは島津太郎丸様へ、やっと妾の隠密としての役目を果たして義理を立て、そうして島津太郎丸様には、海上を船で本国へ、お帰りなすったからでございます」ここまで云って荻野八重梅、暗然と南方を眺めやった。