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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
お榧猛然と立ち上がり、雑巾桶をひっ抱えた。「ああ云えばこう云い、こう云えばああ云う、水喰らわせるぞオ、勘弁出来ねえ!」
「ご免ください」とそのとたん、門を潜った者がある。
「誰だア!」と喚いて振り返ったお榧、「ヒャーッ、これは浜路お嬢様で!」ペタペタ板の間へ坐ってしまった。名主で名望家で金持ちで、帯刀ご免の仁右衛門の娘、浜路とあっては歯が立たない。自分の家が掃き溜なら、鶴が下りたというものである。
「毎々お六がお世話になり、有難いことでごぜえます。今日はようこそお立ち寄り、むさくるしい所でごぜえますが、マアどうぞちょっとお上がんなすって、オイお六や座布団を! と云ってもお前は聾者だったね。アッ、それに座布団もない。フッフッフッフッ貧乏でがしてな。と云うのもここにいる馬鹿亭主が、イエなに、ほんの好人物で、随分働きもありますが、悪いことには神様を、ナニサ神様も結構でがすが、拝んでばかりおりましてな、生活の足しにはなりましねえ。……それはそうとようおいで、せめてお茶でも、オヤいけない、生憎切れておりましてね、あのそれでは白湯なりと。と云って珍らしいものではなし。