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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

するとこの時林の前を、萩原の方へ行く者がある。他でもない酒場の浜路。と行手から婆さんが来た。口やかましやのお榧である。

「おやおやこれはお嬢様、もうお帰りでごぜえますか、まあよろしいじゃごぜえませんか、あの萩原までめえりましてな、茶を一つまみ買って来ました。お茶を入れますだあ、お茶を入れますだあ」

「有難う」と云ったが酒場の浜路、微笑を含んだものである。「いいえそれには及びません、この次ご馳走になりましょう、彦兵衛小父さんによろしくね。さようなら」と行ってしまった。

「ふんとに綺麗なお嬢様だねえ、それになかなか愛嬌があるよ」見送って呟くお榧の前へ、ヒョイと現れたのは伊集院である。

「ご新造さん、ご新造さん」猫なで声で呼びかけた。

「ヒャッ」と云うと振り返ったが、「何かご用でごぜえますかな?」胡散臭そうに伊集院を見る。

「失礼ながらお前さんは、彦兵衛さんのお神さんで?」

「へえ、さようでごぜえます。それでは何か彦兵衛が、悪いことでも致しましたので? それならご勘弁願えますだ、根はいい人間でごぜえますが、神様狂人でごぜえましてな、それに俺とは反対に、どうもひどく口やかましくて……」