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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

うち込まれそうな風采である。宿帳へ記した名を見れば、

江戸小石川、山影宗三郎。水戸屋敷から出た武士である。

夕餉を済ますと宿を出た。

「宿の景気を眺めて来る」

「へえへえおいでなさいまし」

ここ木曽の福島宿は、山村甚兵衛の預かる所、福島関の存在地、いわゆる日本の裏門で、宵の口ではあったけれど、江戸とは異い人通りも少く、聞こえるものは水ばかり、すなわち木曽川の流れである。

今日停車場のある辺り、その時代は八沢と云う。人家途絶えて木立ばかり、その木下闇へかかった時、声も掛けずに背後から、サッと切り込んだ者がある。

右肩から掛けて脇腹まで、大袈裟掛けのただ一刀! 斬られてしまっては話にならない。

前へ飛ばず横へ逸れず、逆モーションという奴だ、アッという間に宗三郎、背後ざまに飛び込んだ。シュッと鞘走る刀の音、ズイと上段に振り冠る。構えは正しく円明流!

「莫迦!」とまずもって罵った。

「声も掛けず背後から、闇討ちするとは卑怯な奴、これ名を宣れ、身分を云え! 本来ならばこう云うところ、しかし俺はそうは云わぬ。と云うのは見当が付いてるからよ。……江戸を発って甲州路、府中の宿へかかった頃から、後になったり先になったり、稀有の奴が附いて来た。