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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

……どこかに水はないかしら? 谷へ行こう、谷川へ。そうして水を汲んで来よう。あッ、しまった、汲むものがない! あったあった手拭いが! これへたっぷり湿して来て、キューッと口へ注ぎ込んであげよう。……そうすると宗さん眼をあけて、お仙、命の恩人だぞよ、江戸へ帰って夫婦になろう! きっとおっしゃるに相違ない! ……水! 水! 水! 谷川谷川……! でも何だか心配だわねえ。妾の行ったその留守に、誰かさらって行くかもしれない! あッ山窩! あッ狼! 食われてしまう、食われてしまう! 駄目駄目駄目、駄目だわよ。……やっぱりそうだ背負って行こう。……」そこでお仙宗三郎を背負った。「おお重いおお重い、恋の重荷を肩にかけ、嬉しいわねえ、重い方がいいわ」

二三間歩いたその時であった、丘の方からカバカバと、蹄の音が聞こえて来た。つづいて血走った女の声、

「山影様! 山影様! 浜路でございます!」

浜路、探しに来たらしい。

「どこにおいででございます! 浜路さがしに参りました! 山影様! 山影様!」

サ――ッと丘から駆け下りて来た。

驚いたのはお仙である。丈のびた草間へ身を隠し、じっと様子をうかがった。