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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

曹操は直ちに大勢の人を派して伐らせた。ところがその神木の幹は、鋸の刃も斧もてんで受けつけないということで、幾日経っても、材木は運ばれてこなかった。

曹操は聞いて、必定それは、人夫どもが祠の神木だという伝説に恐怖を抱いているせいだろう。自分がそこへ臨んで、彼らの迷信の蒙をひらいてやる、車の用意をせよ、と命じて、急に数百騎の供をつれ、躍龍潭へ出かけて行った。

車をおりて、梨の木を仰ぐと、梢は雲に接し、根は百龍のごとく淵に蟠っている。

曹操は根もとへ寄って、

「普天の下、われに怪をなすものはない。いま汝を伐って、わが建始殿の棟梁とする。汝、精あらば後生の冥加を歓んでよかろうぞ」

剣を抜いて、ちょうっと一颯、梨の幹へ、一伐を加えた。

するとそれを眺めていた土地の老翁や神官などが、みなあッと、声を放って哭いた。その声と共に、震々、梨の木は葉をふりこぼし、幹は血のごとき樹液をほとばしらせた。

「すでに予が斧初めの刃を入れた。もし木の精が祟るなら曹操へ祟るだろう。もう心配はないから恐れずに伐れ」

彼は、工匠の蘇越や人夫どもへそう告げて、すぐ洛陽へ立ち帰った。

しかしその車を宮門で降りたときは、すでに彼の顔色は常でなかった。