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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「どんな薬がよろしいかな?」
「戴けますなら金創の薬を」
「よろしゅうござる、ちょっとお待ち」
製薬室へはいったかと思うと、すぐに童子引き返して来た。手に黄袋を持っている。
「さあさあ膏薬、お持ちなされ」
「有難う存じます、いただきます」
玄関を出ると薬草の庭、鳥どもが足もとへ集まって来た。
「いいわねえ」と組紐のお仙、しばらく庭をさまよった。「こんな所に住んでいたら、身も心もキレイになり、生きながら仙人になれるかもしれない」
廻廊の方から聞こえるのは、例の童子の歌声である。
「重巌ニ我卜居ス、鳥道人跡ヲ絶ツ、庭際何ノ有ル所ゾ、白雲幽石ヲ抱ク」
リーンと響くいい声だ。
「茲ニ住シテ凡ソ幾年、屡バ春冬ノ易ルヲ見ル寄語ス鐘鼎家、虚名定ンデ益無ラン」
翁寂びた声でもある。八九歳の童子が歌っているとは、想像もつかない声である。
ケン、ケン、ケンと雉が啼き、ク、ク、クと七面鳥が啼く、仙はいまさねど仙いますが如く、頭の下がるような光景である。
また舟に乗った組紐のお仙、湖水を岸の方へ漕ぎ返した。
岸へ着いたおりからである、森林の奥から人声がし、山駕籠を取り巻いた一行が、やがて姿を現した。