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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
お榧婆さんの声である。
「喚け、喚け、うんと喚け! 声が涸れたら休んで喚け! ほっつき廻るのは性分だ。今にはじまったことではない。癒そうとしたって癒りっこはない。ましてお前に怒鳴られてはな。むやみに怒鳴ると効が薄い。下手な音楽でも聞くようだ。そうして何んだ、下手な音楽は、すぐに耳に飽きてしまう。そのくせいつも聞いていないと、寂しいような気にもなる。だからお前は喚くがいい。喚かないと変に物足りない。だがな婆さん、云って置くがな、俺の性分を変えようとなら、喚くのを止めて笑うがいい。そうだお前が笑い出すと、俺だってちょっと気味悪くなるよ。笑うって柄じゃアないからな。柄でないやつを出されると、一時は吃驚して身に沁みるよ。そこで俺らの性分だって、一時変ろうというものだ、どうだな婆さん、笑えるかな」彦兵衛老人の声である。
これがお榧に解ったらしい。ゲラゲラ笑う声がした。「ふんとにそうだよ、彦兵衛さんや、妾アどうやら怒鳴りすぎるなあ。ゲラゲラ、ゲラゲラゲラ!」
「え! 本当に笑うつもりか! やり切れねえなあ、冗談も云えない。堪忍してくれ、怒鳴った方がいい」
「いいえさ、妾ア笑う気だよ。