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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
愉快な人達も随分いたよ。杉山さんというお医者さん、文学が好きで眼が肥えていて、ちょっと玄人跣足だった。お酒を呑むと武勇を揮い、私なんかも時々嚇かされたが、酒がさめると穏しくなり、よくご馳走をしてくれた。がこの私はただの一度も、ご馳走を返したことがない。シワンボだったね、その頃から。ええともう一人、福島屋と云って、立派なお菓子屋があったっけ。そこの長男の某さん、この人とも親しくした。顔が蒼白くて眼にケンがあって、鼻筋が通ってよい男だった。町人とは見えない御家人だね。よくこの人のお供をして、お茶屋へ遊びに行ったものだが、やっぱりいつもご馳走になり、私の方からは返さなかった。シワンボだったね、その頃から。だからいまだに出世をしない。……今は夏だが福島の冬、それがまた素晴らしくよかったものだ。実際俺を考えさせてくれたよ。そうそうある時こんなことがあった、雪の降っていた真夜中に、夜啼き鶏の声が聞こえて来たのさ。すごかったなあ、今思っても。その時私はフラフラと立ち、刀を持って外へ出た。人殺しをしようと思ったのさ。こういう心持ちが解るかな? とても解るめえ、紅丸には……」