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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「いよいよ目的地へはいりましたね」

「ちょっとの油断も出来ませんね」

「水戸の鷺衆がいるのですからね」

ひそひそこんなことを囁き出した。

「ナーニ大丈夫だよ、鷺衆なんか」嘲笑うように云ったのは、頭領と覚しい例の美人、「島津の烏組に歯が立つものか」

「それはそうともお紋様」こう云ったのは左側の一人、「でも鷺衆のお絹という女は、手利きだということでございますね」

「そうさ、妾とはいい相手さ。妾の腕とお絹さんの腕、さあどっちが利くだろうかね」頭領お紋の言葉である。

「面白い勝負でございますね」こう云ったのは右側の一人、「でもお前様の勝ちでしょうよ」

「どんなことをしても勝たなければならない。せっかくの使命が果たされないからね」頭領お紋の言葉である。

この女達何者であろう? とまれ薩州島津家の、烏組という団体で、その頭領をお紋といい、何か重大な使命を帯びて、名古屋へ入り込んだということと、その名古屋には常州水戸の、鷺衆という団体が、お絹という女を頭領にして、入り込んでいるということだけは、彼女らの会話で知ることが出来る。

いったいどんな使命だろう?

御器所村の一所、今日公園のある辺り、鬱々たる森林が立っていたが、そこまで一行がやって来た時、森の奥所から声がした。