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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

あっ、笑いましてございます」

「おお笑ったか、どれよこせ! ……これはいかにも、笑った笑った」

「殿」と紋右衛門声をはずませる。「是非拝借、望遠鏡を」

「さあ見るがいい」と手渡した。

「笑った笑った、笑いましてござる」

「また笑ったか、どれよこせ。……いかにも笑った、得も云われぬ。……立ち去る立ち去る。見えなくなった」

その翌日の同じ時刻に、あたかも物に憑かれたように、宗春天主へ上がったが、見ればやっぱり同じ女が、同じ所に立っていて、同じように妖艶に笑ったものである。

「不思議な女だ、何者だろう? ……これ三弥、紋右衛門、明日もおおかたあの女は、あそこへ来るに相違ない。そち達二人待ち伏せし、うむを云わせず引っとらえ、大奥へこっそり運ぶよう。がただし間違っても、手荒くあつかってはならないぞ」

「かしこまりましてございます」

さてその翌日尾張宗春、同じ時刻に天主へ上った。

「不思議な女だ。心を引く。あんな女は見たことがない。何だか俺はあの女に、魅せられてでもいるようだ。どれ……」と云うと望遠鏡を取った。

じっと覗き込んだものである。

恋地獄尾張宗春

宗春望遠鏡で覗いたが、どうしたものか今日はいない。