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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
お絹こんなことを呟きながら、森の中を歩き廻った。
「おやここに足跡があるよ。これは女の足跡だし、こいつは二人の男の足だ。規則正しく二つずつ、同じ間隔に印いている。解っているよ、駕籠舁きの足さ。トヤ駕籠を舁いでいた駕籠舁きの足さ。よし来た。こいつを従けて行ってやろう」
霧が森の中に拡がっている。日中さえあまり人通りのない、深い寂しい御器所の森! まして今は明け方である。人っ子一人通っていない。雀が八方で啼いている。声といえばそれだけである。
「おやおや足跡が消えてしまった」
立ち止まった眼の前に立っているのは、十抱えもあるらしい杉の大木、四方八方に枝葉が拡がり、空を笠のように蔽うている。
「随分大きな杉の木だねえ。神代杉とでも云うのだろう。この木を切って家を建てたら、十軒ぐらいは建つだろう。それはとにかくこの木の前で、足跡が消えたのはどうしたんだろう? 曰くがなければならないぞ」
お絹、杉の木へさわって見た。
「まるで鎧でも着ているようだ。堅くて冷たくてしっかりとしている」
トントントンと叩いてみた。
「おやおやこれは少し変だ」そこで、じっと考え込んだ。でまたトントンと叩いて見た。