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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
でも狂人ではございません。まだまだ正気でございます。でもいつまでも逢えないと、狂人になるかもしれません。妾を狂人にしないように、どうぞお願い致します。江戸を離れて山を越し、川を渡って幾十里、木曽山中へはいった事さえ、並み大抵な苦労でなく、妾は随分痩せました。ようやく縁あって巡り合い、嬉しいと思ったも一時で、すぐに別れてまたバラバラ、行方が知れないのでございます。お目付けなすってくださいまし。……さてそれでは小手調べ、陽焼けて赤い山かがし一匹使ってお目にかけます」
腰の畚からスルスルと、一匹引き出した山かがし、キューとしごくと棹にして、掌へ立てたものである。長さ三尺、一本の棒、肌がテラテラと陽に光り、舌がベロベロと口から出、細い首根っ子を左右に振り、泳ぐがように踊り出した。
と、唄い出したお仙の声!
「日がな一日さがしても
それと似かよう笠もない
いつか逢おうといったのに
草が枯れても逢われない」
涙を含んだ声である。
「さあさあ今度はコマ結び、二匹しっかり結びましょう、それがズルズル解けるなら、お手拍子ご喝采を願います」
畚からもう一匹引っ張り出し、二匹を結んで地へ置いた。