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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「そうかと思うと気に入ると、身銭を切って入れ上げるそうだ」

六文というのは私娼のことで、一回六文で春をひさぐので、そういう綽名が付いたのである。

また一方の片隅では、山巡りの役人の武士達が、こんな話を取り換わせている。

「山窩には全く閉口でござる。何んとかして根絶やしにしたいもので」

「どうも巣窟が解らないのでな」

「めっきり最近は横暴を極め、山を下って人里へ出、放火をしたり強盗をしたり、婦女子を掠めたり、旅人を殺したり、それがみんな我々どもの、責任になるのでやり切れませんて」

「山窩とは云っても武芸に達し、それに多数屯していて、変幻出没自由自在、向こうへ追えばこっちへ逃げ、こっちを抑えれば向こうへ遁がれる、まるで武蔵野の逃げ水のような奴らで」

こっちの隅では薬草採り達が、採集の話に耽っている。その間を酒場の女が、燗瓶を持って飛び廻る。唄い出す奴、怒鳴る奴、笑い出す奴、口論する奴、女を捕えて口説く奴、一群が出て行くと一群が入り込み、掴み合ったかと思うと和睦する。

「酒だ!」「肴だ!」「飯だ!」「茶だ!」

人いきれと酒の香と、汗の匂いと髪の毛の匂い、ジャラジャラと音を立てるのは、公然に賭博をするらしい。