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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「おやおや、いよいよ変だねえ、みんな草っ原へ坐ってしまったよ」

いかにも烏組の六人の女、ベタベタと地面へ坐ってしまった。

と、お竹が云い出した。

「まあお絹さんもお坐りなさいよ。天気だってこんなにいいんだからね。そんなにキョトキョト見るもんじゃアないよ。面白い話でもしようじゃアないか」それから暢気そうに云い出した。

「昔々ある所に、烏と鷺とがいたんだとさ、烏は黒くて鷺は白く、そうして鷺は大莫迦で、烏は大変利口だったとさ。ええとそれから何んだっけ。……」

「ふざけていやがる」と思ったが、お絹にはどうにも出来なかった。

ノビノビと坐ってはいるものの、その坐り方が尋常でない。ちゃあアんと忍びの骨法に適い、逃げ出す隙間がないのであった。すなわち六人が六方に分れ、グルリと一つの円陣をつくり、お絹を取り巻いているのであって、ビクとでもお絹が動こうものなら、すぐに円陣がキューと縮まり、難なく取り抑えてしまうだろう。ねばいねばい鳥黐の輪が、伸縮自在を暗示して、置かれてあるとみなさなければならない。お絹にもそいつは解っていた。解っているだけに身動きも出来ない。心をイラツカせるばかりである。