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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
でそっちへ行くことにした。容易に歩みははかどらない。幾筋か枝道が出来ている。ある所は彎曲をなし、ある所は螺旋形をなし、うっかり枝道へ分け入って、行き詰まるようなこともあった。
さあ幾時間費したろう? 朝ではあるまい、日中だろう? 否あるいは夕方かもしれない。ただし地下道は闇である。ただ龕燈の光ばかりが、行く手を照らすばかりである。
「おや!」というと鷺組のお絹、にわかに立ち止まって聞き耳を立てた。「お聞きなさりませ、山影様、あれ水音が聞こえます」
云われて宗三郎耳を傾けた。いかさま大河の流れるような、大水の音が聞こえて来た。
「いかにも水音、これは不思議、どこを流れているのでござろう?」
「さあ」と云ったがお絹にも、河の在所が解らないらしい。「先へ進むことに致しましょう」
依然として道は歩きにくい。あえぐようにして進んで行く。
と道が行き詰まった。その正面に扉がある。鍵の穴から仄々と、菫色の火光が射して来た。
「山影様」と鷺組のお絹、宗三郎の耳へ口をつけた。「いよいよ参ったようでございます。燈火の光の射す以上は、人がおらなければなりません。どれ!」と云うと顔を寄せ、鍵の穴から覗き込んだ。