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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

尾張宗春も気の毒であった。二日二夜の長きに渡って、目茶目茶に愛慾をそそられたのである。そのあげく無類に優秀な、娘の肉体を見せられたのである。どんな人間でも狂暴になろう。しかも室内には依然として、催情的の香の香が匂い、催情的の燈火が燃え、そうして隣りの部屋からは、――誰がいったい奏するのか、催情的の音楽が、猟り立てるように聞こえて来る。狂暴にならない方が不思議である。

浜路の力が弱って来た。抵抗力が衰えて来た体が弓なりに曲がって来た。今にも床上へ仆れるだろう。

宗春の力は加わった。歓楽はもうすぐだ! 彼のネバネバした唇が、浜路の唇へ落ちようとする。彼の巻き付いた両腕が、まさに獲物をたおそうとする。

ヒタと向かい合った四つの眼! 胸と胸とがセリ合おうとする。

「助けてください! 助けてください!」しかしその声も嗄れてしまった。左右に首は振るけれど、宗春の唇は落ちかかって来る。

二人ながら全身汗に濡れ、二人ながら吐く息まるで火だ!

その間も香炉からは煙りが立ち、微妙に部屋を馨らせている。その間も龕からは菫色の燈火が、ほんのりと四方を照らしている。そうして聞こゆる催情的音楽!