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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「名薬お持ちと承わり、お尋ね致しておりますので。あのところであなた様は?」

「さよう私は」と云ったけれど、蝮酒屋の給仕女に、詳しい話をしたところで、仕方がないと思ったのだろう。「やはり名薬を戴きたいものと、それでお尋ねしておりますので。どれ、それでは提灯を」

「さあお使いなさりませ」

提灯を受け取った萩原仁右衛門、その辺をグルリと見廻ったが、道人どころか犬もいない。と、眼を付けたは大杉の木。

「はてな?」と呟くとトントンと打った。「うむ、これは空洞だ」耳を幹へ押さえ付けた。「おかしいなあ、物音がする。待てよ」と云うと提灯を上げ、仔細に杉の木を調べたが「ははあそうか、小幡流の、兵法に則った間道づくり、大木の髄をなかば刳り抜き、合薬を塗って腐蝕を防ぎ、生木のままで道をつくる。うむ、この下には地下室があるな!」

昔は水戸家の名ある武士、間道を見破ったものである。

「杉の木、間道である限りは、観音開きがなければならない」ズーッと幹を撫で擦った。「こいつだ!」と云うと一所を、グイと仁右衛門力まかせに押した。と音もなく大木の幹、縦二間横一間、合わせた掌をひらくように、グーッと開いたものである。