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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「実は」と正休冷静に、「先ほどのことでございました、上名古屋の丘の上で、それを見たのでございます。見れば盗み星から一道の黒気、垂れ下っているではございませんか。さよう、お屋敷の屋根棟にな。で、これを逆に申せば、お屋敷より一道の黒気立ち、それが凝って天上の、盗み星となったと申されます。簒奪者の正体を見現わそうと急いでここまで馳せて参り、主人に面会を求めましたところ、その主人が意外も意外、殿ご前だったのでございますよ。で、申し上げたのでございます、今後悪あがきをなさいませんよう」
「うむ」と云ったものの太郎丸、後の言葉が続かなかった。しかし心では思ったものである。
「恐ろしいものだな、天文というものは。いやそれより恐ろしいは、この西川正休だ! 俺の本心を見破ったらしい。此奴は幕府の天文方、此奴に本心を見破られた以上、幕府有司の連中に、告げ口されると思わなければならない。告げられたが最後計画画餅だ。と云ってこれほどの大学者、しかも専門の天文によって、俺の本心を見破ったからは、どのように俺が口弁をもって、云いくろめても疑心を解くまい。困ったものだ! どうしたものかな! うむ、こうなっては止むを得ない、林家同門の誼みはあっても、また惜しむべき人物であっても、大事の前の小事として此奴をここで殺害してやろう」