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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
依然として姿は解らない。しかし濛々たる白気の中に、鷺組のお絹佇んで、お紋の行動を見ているらしい。
さすがのお紋も身動きさえ出来ず、怒りに顫えて立っていた。
とまたお絹の声がした。
「さあさあお霜さんお葉さん、そこに仆れている山影さんを、連れて行って介抱しておくれ、くっ付いているモチのようなもの、逆に撫でればすぐに取れる。ナーニ妾にゃア解っている。『卵膠』と云って子供瞞し、卵と膠で製したものさ、上から撫でるから取れないのさ。捕り物道具のその中では、秘伝にも行かないつまらない物だよ」
間もなく宗三郎の声がした、「忝けのうござる、もはや大丈夫!」
つづいて仁右衛門の声がした。
「いや有難い、息が出来る」
つづいて聞こえる浜路の声、「有難うございました。正気づきました」
鷺組の連中に介抱され、三人ながら立ち上がったらしい。
依然濛気は立ちこめている。その中で打ち合う音がする。少し離れた方角では、伊集院の一隊とお仙の一隊、いまだに揉み合っているらしい。
見物に来る者、逃げて行く者、雨戸を開ける音、閉じる音、七ツ寺界隈騒然と、戦場のようなありさまである。
一方こんなに騒がしいのに、堀川に添った日置あたり、材木置き場に自然と出来た例の木小屋の静かさと来たら、むしろ神々しいほどである。