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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
つまり何んだ、こういう意味さ、『うしゃアがれ! もう来るな!』さすがは利口なお嬢さんだったね、もうそれっきり来なかったよ。そりゃア来ないのが当然さ、ああいうお嬢さんというものは、抱かれることには慣れているが、ああいう勇敢な障子の閉て方には、おそらく慣れていないだろうからなあ。それに何んだ、お嬢さん方には障子一つを閉めるにも、作法というものがあるらしいなあ。そうして作法に外れると、下等だと云って卑しむらしいなあ。だがしかし俺の不作法と、そのお嬢さんの心持ちと、どっちがいったい下等だろうなあ。だがマアそれはどうでもいい。それにしてもあの時この俺がだ、も少しちいさい音を立てて、障子というものを閉めていたら、たしかに俺は出世していたよ。そうだよお嬢さんの婿になってな。では後悔をしているかというに、当然なことには後悔していないよ。と云うのは跣足で歩けないからさ」
こう云いながら薬草道人、ヒョイと片足を突き出したが、月光に照らされてその片足、充分美的でないということが、鮮かに証明されたものである。
「ね」と道人云い出した。「どうも浮世の往来というもの、石ッころがあったり茶碗のカケがあったり、凸凹していて歩きにくいなあ。