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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

これがお仙の心持ちであった。とまれ生死の巷を経、血煙りの中を通って来た者は、恋の占有というような心は、案外押さえることが出来るものらしい。

誰も彼もみんな疲労れていた。

誰も彼もいくらかずつ傷を負っていた。しかし楽々と足を延ばし、休むことなどは出来なかった。と云うのは島津太郎丸の勢が、いつ寄せてくるか知れないからである。しかしそうやって気を張り詰め、起きていたところで仕方がなかった。で弥五郎が云ったものである。

「ナーニ大丈夫でございますよ、乾児の奴らを張り込ませてあります、それにお絹様の部下の衆が、物見に行っております筈、島津方から押し寄せて来たら、それ前に知らせがございましょう。それに城内のお役人さんだって、高見で見物はなさいますまい。かりにも中納言様をおびき出し、謀反人にしようとしたんですからねえ。すぐにも兵を繰り出して、太郎丸とかいう悪党の、御器所の屋敷を攻めましょうよ。……それにどんなに乱暴者でも、白昼攻めては参りますまい。また百人や二百人、よしんば攻めて来たところで、乾児の奴らが付いております。命知らずの連中でね、追い返すことだって訳はありません。