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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

「ナーニ、みんな出鱈目だよ、そうさお前さんの云うことはね」

「それもよかろう。そう思っていな、だがしかし明日から、彼奴の姿を見ることは出来まい」

「それじゃやっぱり本当なのね」

「クドい女だ、嘘は云わぬよ」

「それじゃあ妾考えよう」

「何も考えるにも及ぶまい、解った話だ、うんと云いな」

「そうだねえ、うんと云おう」

「おお承知か、それは偉い、それ五十両、旅用の金だ」

「薄っ気味の悪い旅用だねえ」

「何を馬鹿な蛇ではなし」

「およしなさいよ、蛇々と」

薩摩の藩士伊集院五郎と、両国広小路の蛇使い、お仙との奇怪な話から、この物語は開展する。

さてその翌日の払暁のこと、三人三様の人間が大江戸の地を発足し、甲州街道へ足を入れた。一人は立派な旅姿、紛れのない若武士で、小石川は水戸屋敷、そのお長屋から旅立った。もう一人は堅気の商人風、年は三十前後であろう、菅笠で顔を隠しているので、ハッキリ正体は解らないが、薩摩屋敷から出たところを見ると、伊集院五郎の変装らしい。

ところでもう一人の旅人は、全く異様な風采であった。紺の脛巾に紺の股引き、紺の腹掛けに紺の半被、紺の手甲に紺の手拭い、一切合切紺ずくめ、腰に竹細工の魚籃を下げ、手に手鉤を持っている。