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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
荻野八重梅驚かない。「吠えろ吠えろ、高音をかけろ! これが普通の夜中なら、人も来ようし町役人、駈け付けてくれるかもしれねえが、今夜ばかりは駄目の皮だ! 島津のご前、御器所のお屋敷、そいつを囲んでお役人、テンヤワンヤと騒いでいる! 町人衆は出歩かない。悲鳴を上げれば上げるほど、恐ろしがって寄り付かない! 人を殺すにゃア格好の晩だ! ……のた打てのた打て、這い廻れ! 刳ってやろうよもう一眼!」
振り上げた銀簪逆手握り、常夜燈の光でギラギラギラ! 左手で取り上げた褄を洩れ、翻めく蹴出しは水色だ。それへ点々と滴る血! はみ出した脛の真っ白さ! いつか駒下駄脱ぎすててある。
「人殺シーッ」と逃げる奴、追い廻して行く手へ立つ。「人殺シーッ」と後へ逃げる。追い廻して行く手へ立つ。
追い詰められた薪十郎、今は窮鼠、猛然と延し、血だらけの顔を真ん向かい「毒婦めエーッ」と躍りかかった。
軽く反せた荻野八重梅、女力に髻を掴み、胸もと近く引き寄せたが、「さあどっちが悪党かねえ」立派に突いた、もう一眼!
「ワッ」という悲鳴、また仆れる、薪十郎の首根ッ子、土足で踏まえてグ――ッと力!