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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
不思議とは思ったが疑がわなかった。訳あって小屋から身を隠し、こっそりどこかに住んでいて、俺が恋しているように、お前も恋しているのだろう。可愛い可愛い荻野八重梅、ひょっとかすると俺を進め、お手もと金を盗ませようと、巧らんだ事が露見して、人気の芸人の身分から、お尋ね者に落ちたかな? もしもそうなら俺も同罪、いよいよ是非とも探し出し、癈者同志慰め合おう! 俺はな、俺はな、こう思っていたのだ! それを何んぞや」とまた一歩ヌッとばかり進んだが、今度は振り上げた血刀を、ソロソロソロソロと下ろして来た。「それを何んぞや今聞けば、初から腹にもくろみがあって、そいつの道具に俺を使い、恋をもてあそんでいたそうだな! さすがは!」と云うと幹之介、城の方へジーッと眼をやった。「さすがは薬草道人様、あなたの眼力お狂いなく、私の女、荻野八重梅、市井の毒婦でございました!」眼を返すと八重梅を見た。とその眼が霞んで来た。「だがそれさえこの俺は、許そうと思っていたのだよ」咽び泣くような声である。「が、今は許されない!」血刀を下へ下ろし切った。その切っ先が真っ直ぐに、八重梅の咽喉首へ向けられた。