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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

庭に下り立ち、宗春と向かい、佇ずんでいるのは薬草道人、何んの変ったところもない。依然として襤褸をまとっている。肩に白烏が止まっている。手に白檀杖を持っている。そうして足は跣足である。

側にあるのは薬剤車、これにも何んの変化はない。いやいや一つだけ変化がある。十本の薬草が花の代りに、果実を結んでいるのであった。

傍らに引き添ったは童子の紅丸、並んでいるのは猪十郎。この二人にも変化はない。一人は珠のように美しく、一人は醜くて跛者である。少し下がって地にひざまずき、並んでいるのは多勢のモカ、いずれも身綺麗な扮装をし、持っていた病気など癒ったのであろう、健康そうな様子を見せている。

雪洞が無数に照っている。

今や別離の挨拶が、取り交されようとしているのであった。

「道人無事で参るよう」

こう云ったのは宗春である。

「いよいよお別れでございます」

こう云ったのは薬草道人。

「いろいろ道人には厄介になった」

「何んの何んの私こそ」

ここでしばらく沈黙した。

「何んとなく名残りが惜しまれるな」尾張宗春また云った。

「お名残り惜しゅうございます」道人もさすがに寂しそうである。